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第573回 有恒会 大阪北支部 例会報告

2025.12.03

2025年11月28日、第573回有恒会大阪北支部例会が、27名(内府大卒2名、女子大卒3名)の参加を得て、大阪駅前第2ビル文化交流センター大セミナー室で開催されました。

今回は、大阪公立大学大学院理学研究科の藤井俊博准教授に、「宇宙線のひみつ:宇宙最強のエネルギーをもつアマテラス粒子」と題してご講演いただきました。藤井准教授のご専門は極高エネルギー宇宙線の観測であり、宇宙最強のエネルギーをもつ宇宙線「アマテラス粒子」の第一発見者です。2024年には第42回大阪科学賞を受賞され、南部陽一郎物理学研究所兼任研究員でもいらっしゃいます。

宇宙空間には高エネルギーの放射線が存在し、地球に絶えず降り注いでおり、この放射線を「宇宙線」と呼んでいます。アメリカのユタ州の砂漠地帯に設置された「テレスコープアレイ実験」の粒子検出器で定常観測を続ける中、開始から14年半経った2021年5月27日、観測史上最高クラスのエネルギー=244エクサ電子ボルト(エクサは100京)の宇宙線が観測され、発見した藤井准教授によって「アマテラス粒子」と名付けられました。

このような極高エネルギー宇宙線が、宇宙の形成や地球46億年の気候変動、人類の起源や生命の進化にどのような影響を及ぼしているのかを解明するカギを握っているとのことです。

宇宙線はエネルギーが高いほど宇宙磁場で曲げられにくく、宇宙線の到来方向が発生源を示すと考えられているそうですが、アマテラス粒子は、極高エネルギー宇宙線の起源と目される候補天体がほとんどない「局所的空洞」と呼ばれる方向から到来しており、アマテラス粒子の粒子種も明らかになっていません。アマテラス粒子がどこから来たのか、その正体は何なのか等、「宇宙線の起源」についての謎と興味は深まるばかりとのこと。極高エネルギー宇宙線の発生源を特定するためには、より多くの極高エネルギー宇宙線を捕捉する必要があり、テレスコープアレイ実験の観測設備を4倍に拡張する計画を進めているそうです。宇宙線のひみつを解き明かすことによって「宇宙の謎」が少しずつ究明されていくことが期待されています。

藤井准教授による一句=「あまてらす まだ観(み)ぬ宇宙(そら)の みちしるべ」   

大変興味深いご講演をお聞きした後は、藤井准教授も交えた昼食懇談会に移りましたが、藤井准教授には参加者からの相次ぐ質問にも丁寧にお答えいただき、参加者一同、強烈な「知の刺激」を受けて閉会となりました。

文責:副支部長 亀井信吾(1977年商学部卒)

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